カボッチャマンブログ

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読書感想「運動脳」第2章

前回に引き続き、運動脳の内容を書いていきます。

 

第2章 「ストレス」を取り払う

〇頭を鈍らせる見えない敵

ストレスによる疾患の治療と予防には、運動が目覚ましい効果を上げることが立証されている。

そもそもストレスとは何か?

身体にはHPA軸(視床下部hypothalamus、下垂体pituitary、副腎adrenal grand)というシステムが備わっている。何らかの刺激により視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、それによって下垂体から副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、それによって副腎からコルチゾールが分泌される。コルチゾールが分泌されると動機が激しくなる。敵から身を守るために臨戦態勢をとるため、筋肉に血液を送り出そうとして心拍数を上げている。

※臨戦態勢が必要でなくなればコルチゾールは低下する。

生存する可能性を高めるには、危険が迫った時にすぐに知らせてくれる警報装置が必要で、それが扁桃体である。扁桃体が興奮することによってHPA軸が働き、コルチゾールが分泌される。扁桃体コルチゾールによってさらに興奮し、またコルチゾールが分泌されるというストレスの負のサイクルが生まれる。ずっとパニックになっていては生きていけないので、ブレーキ役を務めるのが海馬。海馬は記憶の中枢だけでなく、感情が暴走しないようにするためのブレーキとしても働いている。

闘争か逃走かの状況では、たくさんのエネルギーが必要になるため、コルチゾールが分泌されることは役に立つ。しかし、その状態が長く続くと海馬の細胞が死んでしまう。ストレスにさらされすぎると海馬が機能しなくなり、扁桃体の興奮を止められなくなる。それによってさらに興奮が続くという悪循環になってしまう。

 

〇運動でストレス物質「コルチゾール」をコントロール

ランニングやサイクリングなどの運動をするとその間はコルチゾールの分泌が増える。なぜなら肉体に負荷がかかるのは一種のストレスだから。しかし、運動が終われば身体はストレス反応を必要としないので、コルチゾールの分泌が減り、さらに、運動を始める前のレベルにまで低下する。運動を習慣づけると、運動中に上昇するコルチゾールが減り、反対に運動後に低下するコルチゾールは増える。

定期的に運動を続けていくと、運動以外のことによるストレスでもコルチゾールの分泌量がわずかしか上がらなくなる。

扁桃体の興奮にブレーキをかけるのは海馬だけでなく、前頭葉もその役割を果たしている。運動によって前頭葉も強化することができる。

ストレスや不安による苦痛をおさえる薬はたくさんある。それと似た効果をもつのがアルコール。脳内のGABAというアミノ酸が脳細胞の興奮を抑える働きをする。アルコールを飲むとGABAが分泌されるため。不安を一時的に忘れることができる。

ある研究で、筋肉が、ストレスの代謝物であるキヌレニンを分解していることがわかった。肝臓が血液中の有害物質を除去するように、筋肉は機能障害を誘発するストレス物質を除去する働きをしている。筋力トレーニングをして筋力を向上させることは良いことだが、ランニングなどの有酸素運動と両方行うのが最も良い。

 

〇世界のストレス研究がこぞって「運動の効果」を発見中

運動の効果のおさらい

①運動を終えると血中のコルチゾール濃度が下がり、次からはあまり上がらなくなる

②ストレス反応のブレーキ役である前頭葉や海馬の活動を促進し、不安の引き金である扁桃体の活動を抑制する

③脳の興奮を抑えるGABAの作用が活発になる

④筋力がつき、ストレス物質を無害化する働きが促進される

 

前頭葉などのストレスを抑える部位は25歳くらいにならないと完成しないが、扁桃体のようなストレスを生み出す部位は17歳くらいで完成する。そのため、思春期のこどもは衝動的で、いつも悩みを抱えている。

 

チリの研究で、10週間の運動プログラムを終えた思春期の子どもは、健康になり、自信や幸福度が増した、という結果が出た。

フィンランドの研究では、週2回以上運動する人はストレスと無縁だったという結果が出ている。

 

〇敵になるストレス、味方になるストレス

アメリカの研究で、サルの扁桃体を切除したところ、通常ならば恐怖心を覚えるはずのヘビを見ても、サルは逃げたりせず、ヘビをつかんでおもちゃのように遊んだ。

アメリカにいるある女性はウルバッハ・ヴィーテ病という病気だった。その病気は扁桃体などがある側頭葉が破壊されてしまう病気だ。それでも知能面には影響がなく、ストレスの研究に協力してくれた。彼女は、ヘビやクモが嫌いだと答えていたが、恐怖心はなく、ためらいもなく触っていた。ホラー映画を見ても恐怖をあまり感じなかった。一方で、悲しい、楽しいといったほかの感情は正常にもっていた。彼女は恐怖心を感じないため、ナイフで脅され金品を奪われる経験をしても、すぐに立ち直り同じ行動を繰り返した。貧困層が多く麻薬が暴力がはびこる地域で暮らし続け、夜遅くになっても一人で出歩いた。

 

〇賢くストレス・不安を解消する

ストレスをゼロにすることはできないが、運動によって、海馬や前頭葉の働きを活性化させれば、扁桃体の興奮が起きたときのブレーキが働き、今よりもストレスに苦しまなくなる。仕事でミスをして上司から叱責されたときには、イライラしたり、落ち込んだりする。そんな状態で仕事を続けてもパフォーマンスが下がるだけだから、運動するのがいい。運動をする時間を作れば、気分が爽快になるだけでなく、仕事の質も向上する。

食欲抑制にも運動が効く。コルチゾールには脂肪燃焼を抑え、食欲を増加させる働きがある。運動によって、コルチゾール濃度がさがれば、食欲が抑えられるだけでなく、運動によって消費カロリーが増える。

ランニングとウォーキングを比べると、ランニングの方が効果が高い。最低でも20分は続け、できれば30~45分行うのが良い。心拍数をかなり上げる運動をすると、脳が、不安やパニックの前触れではなく、良い気分をもたらしてくれるものと学ぶ。健康上の理由で心拍数を上げられない場合には、散歩に出かけるだけでも運動の効果は得られる。